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【本の感想】小川洋子『やさしい訴え』

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『やさしい訴え』について


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やさしい訴え
2004年10月10日 第1刷
著者 小川洋子
発行所 株式会社 文藝春秋



あらすじと感想


共著も合わせると多分17冊目の小川洋子作品です。読んだものを時系列に並べると1994年の『薬指の標本』と1998年の『凍りついた香り』の間になります。好きなんです小川作品が。ただ、多く読むと小川作品に求めているものが自分の中で決まってしまいそこから外れないかどうかが価値になってしまうところがあります。


あらすじ


夫から逃れ、山あいの別荘に隠れ住む「わたし」が出会った二人。チェンバロ作りの男とその女弟子。深い森に『やさしい訴え』のひそやかな音色が流れる。挫折したピアニスト、酷いかたちで恋人を奪われた女、不実な夫に苦しむ人妻、三者の不思議な関係が織りなす、かぎりなくやさしく、ときに残酷な愛の物語。(Amazon.co.jpから引用)




感想


私は別荘に1人でやってきます。そこでチェンバロ職人の新田氏と女弟子の薫さんに出会います。

私には眼科医の旦那がいて子どもはいません。半ば破綻していた夫婦生活を維持するのが疲れたのか嫌になったのか突然別荘に来て滞在をはじめます。

新田氏は寡黙なチェンバロ職人です。自分に厳しく完璧を求める職人らしい人物。物腰は柔らかく無口。

薫さんは新田氏のチェンバロに惹かれ押しかけてきた弟子です。明るくて大食い、化粧っ気はないが色白で細面、目元はくっきりで形のいい耳。

はじめわたしは新田氏と薫さんの2人が作り出す雰囲気に癒されてました。友人が二、三人とあったのでこうして他人と楽しく会話すること自体が久しぶりだったのではないかと思います。

そして次第に新田氏というチェンバロ作家に惹かれていくようになります。でも新田氏はいつも助手の薫さんという女性と一緒にいます。わたしはなんとか2人を引き離し間に割り込もうとします。一時は成功したかとも思えたのですが2人はもっと深いところで繋がっていて半端に関係をもったせいで余計に疎外感を感じます。

わたしは本当はそんなことをしたい訳ではなかったのではないかと僕は思います。新田氏と薫さんの関係があるからこそ自分が受け入れられてそこに惹かれたのです。でも自分の中にある喪失感を何かで埋めたいという気持ちもあって新田氏との思いと重なってしまったのではないかと。

わたしが求めたのは夫ではなかった。わたしだけを照らしてくれる、柔らかな一筋の光だった。(P22より)


家族、家、別荘、束の間の恋、多くを失った私に残されたのはなんだったのでしょうか。

本当の幸せを考えさせられる作品でした。夫が自分の元に戻ってくれば幸せだったのか、子どもを授かれば幸せだったのか、新田氏が自分を選んでくれたら、薫さんがいなければ、たくさんのもしもが全て叶ったとして私は満足できたのでしょうか。後半、自分の未来を考え決断をする私はようやく自分の人生を生きはじめました。それこそが本当の幸せなんだと僕は思いました。

グラスホッパーの奥さんが溺れたかと思って狼狽する場面、これの前の水着のくだりのあたりが小川作品らしい、もしくは僕が求めていた雰囲気でした。


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