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【本の感想】筒井康隆『旅のラゴス』

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『旅のラゴス』について


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『旅のラゴス』
平成六年 三月 二十五日 発行
平成二十六年 一月 二十五日 十六刷改版
平成二十八年 一月 十日 三十四刷
著者 筒井康隆
発行所 株式会社新潮社



あらすじと感想




あらすじ(引用)


北から南へ、そして南から北へ。突然高度な文明を失った代償として、人びとが超能力を獲得しだした「この世界」で、ひたすら旅を続ける男ラゴス。集団転移、壁抜けなどの体験を繰り返し、二度も奴隷の身に落とされながら、生涯をかけて旅をするラゴスの目的は何か?異空間と異時間がクロスする不思議な物語世界に人間の一生と文明の消長をかっちりと構築した爽快な連作長編。(Amazonより引用)




感想




タイトルから分かる通り今作の主人公ラゴスは旅人です。とある目的で南を目指す彼の半世紀近くの半生がこのわずか250ページあまりの文庫本に詰め込まれています。

まずは世界の説明から。まだ電気や通信といった機器が発明される前の時代の話です。一部の人には感情を読み取れる能力があったり集団で遠くの場所に移動する転移ができたりと僕らの世界の過去とは少し違います。生き物もスカシウマやミドリウシといった見たことのない生き物が出てきます。この世界をラゴスが1人で南に向かって旅をしているというのがこの物語のはじまりです。

あまりにも時間が凝縮していて不思議な感覚になります。一つ一つは20〜30ページの物語なのに読後感はそれぞれが一冊のってのは言いすぎだけど、少なくとも実際のページ数の数倍の文章量があったような気がする。おそらく作中の時間が早く過ぎていき多くの出来事が起こるせいだと思うのだけど、ラゴスの来た道を追体験するのはそれはとても上質な体験。

立ち読みで始めの集団転移を読んで忘れられなくなり結局買うことに。ある一族の転移に参加させてもらうことになったラゴスが一族のボスに変わって転移のパイロットを務めることになる場面から物語は始まる。

数人以上の者の精神力の集合で一瞬のうちに異空間を越え別の場所へ移動すること


これが転移である。しかし参加した一族のボスのやりかたを見ていてラゴスが不安を覚える。時間がかかりすぎていて、皆を緊張させている。もっともまずいのはボスが目的地の思い出すべき情景をボスの言葉で表現してしまっていたこと。一面緑色で、なんとかの花があって木があって...みたいなことを喋ってしまう。

想像力は固定してしまってはいけないのだ。特に想像力の貧困な者が行く先の描写をしたりしてはより想像力の優れた者を貧弱な描写の枠内に閉じこめることにもなり、だいいちにしらけてしまう。


そうなんだ。 頭の中で描いていることは言葉にした時点でかなりの情報が削ぎ落とされてしまう。生のバンドの演奏を音源化する際高音域と低音域がカットされてしまうように、また楽器を前にしたときの空気の振動や距離感がヘッドホンからは感じることができないように、想像の具現化はその時点で劣化が発生する。

転移は読書の楽しみにも似ている。よい物語に出会い頭の中にあるその世界は他の誰でもなく自分のものだ。僕はよい作品ほど映像化が不安に思う。自分が想像する世界を他の形で具現化されるのがつらいからだ。

あなたの傍にいるそのひとを、あなたがどれだけ愛しているか、心の中で教えてあげてください。


ラゴスはこの言葉を道しるべに皆を故郷へ転移させる。この一文の句読点の愛おしいこと。


今のくだりはラゴスの長い旅のほんの序章にすぎない。これから先もラゴスは多くの人に出会う。人の良いラゴスは多くの場合は人に好かれ多くを学びそれを人に教える。

ラゴスの旅は終わらない。旅の目的が果たされたとしても、それは仮の宿であり帰る場所ではない。

出不精の自分にとって本を読むということは旅に出る代わりのようなところがある。作品の中で多くの人物と出会い彼らはまだ作品の中で生きている。

ラゴスもまた、作品の中でいつまでも旅をしている。彼に会って話をしてみたい。



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